超大作~ミニシアターまで年間さまざまな映画が公開されるが、このほど女子高生がメガホンを握り、中高生たちが懸命に作り上げた映画が公開される。その名も『茜色クラリネット』。しかし、上映するための資金が不足していることから現在、クラウドファンディングにて支援者を集っている。
本作が作られるきっかけとなったのは、410名の市民株主が1人10万円を出資して、1992年に設立した北海道を代表するミニシアター・シアターキノが中心となっているNPO法人北海道コミュニティシネマ・札幌で行われている、子ども映画制作ワークショップだ。そこに集った中高生たちが、札幌・琴似(ことに)の住民たち、さらにプロの大人たちのバックアップのもと、1年がかりで制作した作品が『茜色クラリネット』だ。
監督を務めたのは、高校一年生の坂本優乃さん。彼女を中心に中高生21名と、大人約30名と地域コミュニティのバックアップ(600万の制作費は大人たちが集めた)で、2年前の秋からプロジェクトがスタートし、昨年夏休みに撮影、11月に完成を迎えるに至った。
坂本さんたちの大人でも子どもでもない中間の等身大の“いま”を描いたという本作。すでに札幌で公開され、1,000人以上の観客を集めている。さらに『そして父になる』や『海街diary』(公開:2015年初夏)で注目を集める是枝裕和監督からは、「中学生のまっすぐな視線で撮られたこの映像に触れると、“いつの間にか自分も『大人病』にかかってしまったのではないか?”という不安に襲われる。映画について、人生について大切なことを思い出させてもらいました」とコメントが寄せられている。
東京での上映は、11月1日(土)~14(金)まで渋谷・ユーロスペースでの公開を予定しているものの、映画に携わった中高生スタッフや俳優たちが東京公開に合わせて、東京まで行ったり、また監督などが試写会に合わせてキャンペーンに出向いたり、さらに海外映画祭へ坂本監督を送り出す費用などを考えると、と“あと70万円”ほど資金不足とのこと。今回のクラウドファンディングはこの費用を支援してくれる支援者を募ったものだ。
最後に、坂本監督からのメッセージを紹介したい。
「毎週末の稽古では試行錯誤して役作りに励み、渡された脚本には、カット割りを示すラインを数えきれないほど引き、休憩時間には、撮影に使う千羽鶴をみんなで折ったりして、茜色一色の毎日が続きました。今思えば、なかなかハードな準備日程だったようにも感じますが、日々着実に近付くクランクインに備えて、みんなはりきって自分の仕事をこなしていました。そんな私たちのエネルギッシュな感じがこの作品にもにじみ出ていると思い ます。そこに私たちを支えてくださった大人ス タッフの方のプロの技術や、地域の皆さんの暖かさが加わり、撮影中はいつも人と人との繋がりを感じていました。
また、撮影後には演出部の仲間とソウルの青少年映画祭にも参加し、世界各国から集まった、映画界で活躍することを目指す同年代の人たちと交流することもできました。日本にいるだけではなかなか感じることの出来ない価値観の違いや、生き生きと将来について語る姿に出会って、私もいつか彼らとともに未来の映画界を作り上げていけたならどんなに素敵だろうと思いました。
監督であれ、役者であれ、脚本家であれ、私は映画製作に関わることが大好きです。作り上げたときの達成感もそうですが、クランクイン前から漂う、これから映画を撮るぞというあの雰囲気が大好きです。楽しいことばかりが現場ではありませんが、それでもクランクイン前のあの毎日は、誕生日の朝の心が弾む感じに少し似ている気がします。自分の手で創造していくという点では、もしかするとクランクイン前の毎日のほうが楽しいかもしれません。そのくらい、好きなんです。
この映画は青春映画ですが、私たちもまた、映画の中の主人公たちと一 緒に一回り成長したように思います。 この映画を見ると、大人になるとはどういうことなのだろう、と考えるきっかけになると思い ます。子供の自分と一緒に置き忘れて来てしま った夢を、もう一度思い出せる映画だと思って います。特に親子の皆さんや、映画ファンの方 に見ていただきたいです。 東京公開という、大きな舞台に踏み込むこと で、映画の世界の厳しさも魅力も更に広がることだろうと思いますが、それをどんどん吸収して 、いつか大人になったときに夢を追う原動力に していきたいです。どうぞ、応援よろしくお願いいたします」。
映画『茜色クラリネット』はクラウド・ファンディング・プラットフォーム「Makuake」にて資金調達中。