尾行をテーマにした小池真理子氏のサスペンス小説「二重生活」が実写映画化され、若手実力派女優・門脇麦が映画単独初主演を飾ることがわかった。幅広い演技を見せる門脇が、好奇心から既婚男性の秘密に近づく大学院生役に挑戦。長谷川博己、菅田将暉、リリー・フランキーらとともに、異色サスペンスに挑む。
NHK特集ドラマ「ラジオ」で文化庁・芸術祭大賞を受賞し、国際エミー賞ノミネート経験を持つ岸善幸監督の劇場映画デビュー作。門脇は、熱望していた岸組を「いつもの日常がそのままカメラ前でも続いてるような感覚がずっとあり、とても不思議な、でも居心地のいい現場」と述懐。「元々ドキュメンタリーを撮っていた監督とチームですし、役を演じるという感覚を捨てて、そのままでいた方が面白く化学反応するのではないかと思い、自分の中に漠然とある役を演じる時のスイッチみたいなものを今回は捨てて臨みました」と他人の秘密を知る行為におぼれていく女性を演じた。
恋人・卓也と同棲生活を送る大学院生の珠は、恩師・篠原に修士論文のテーマとしてソフィ・カルの「哲学的・文学的尾行」の実践をすすめられ、隣人・石坂を尾行し始める。しかし、尾行を繰り返すなかで、卓也や篠原との関係にも影響が現れていく。
長谷川が石坂、菅田が恋人・卓也、リリーが篠原に扮する。長谷川は、「演技は演技なんだけどドキュメンタリーのように見せる演技というか、いろんなものをそぎ落として二人の間から生まれてくるものを活かすというか……。そういう意味では自由な空間で、逆にその自由がすごく難しく感じる時もありました」と現場を振り返る。
長谷川が、アドバイスしながらも答えは与えないという岸監督を「なかなかサディスティックな厳しい方」と話すと、菅田も「岸監督の現場はめちゃくちゃバイオレンス」と語る。それでも「この作品は現場に入ってみてすぐ撮って、もう1回、そこからまた少し修正してというドキュメンタリーに近いくらいの匂いがいいなと僕も内心思っていたので嬉しかった」と吐露。これまでとは違った緊張感とプレッシャーを感じながらも、「監督は必ず何かを期待して撮ってくださるので、なかなかカットもかからない。でもそれでいいものが生まれたりもしますし。それは役者からするとすごくありがたいこと」とコメントを寄せている。
3月18日にクランクイン、4月11日にクランクアップを迎えた。岸監督は、「人には誰でも他人の人生を覗いてみたいと考える欲求が存在します。全くの他人を尾行することによって自分の人生と重ねあわせるという本作のモチーフに非常に魅力を感じました」と説明し、「登場人物の全てに二重、三重の心理があります。彼らを通じて“今”を切り取りたい」と意気込んでいる。2016年初夏の公開を目指し、編集が行われている。